(しょしひゃっか)
春秋戦国時代に活動した、思想家、学者の集団の総称で、「子」は先生、「百」は多いという意味である。儒家、墨家、農家、道家、陰陽家、法家、名家、縦横家、雑家、小説家の十家に分けられる。このうち、小説家は巷の噂話をまとめて説くものなので、思想が希薄なため無視されることが多い。従って、兵家を加えて十流とするのが一般的である。
春秋から戦国時代ににかけて、旧来の社会秩序が崩壊し、新しい国家理念や道徳、世界観が求められるようになった。また互いに対立し、それぞれ富国強兵を目指す各国の諸侯は、競ってそのような思想家を求め、身分や血統にとらわれずに人材を登用しようした。そのような状況を背景に、紀元前4世紀に最も活動が活発になり、各国を遊説して自己の説を主張し、自由に議論しあう「百家争鳴」の状況が生まれた。
なお、諸子百家の分類は、その当時に存在したわけではなく、前漢末の劉向が戦国時代の文献(古文)を復元研究して分類し名付けたものである。
名称 | 主要人物 | 特徴 | 分類 |
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陰陽家 | 騶衍 公孫発 | 天体の運行と人間社会のありかたとの関連を説く。自然現象の変化を陰と陽の交替という原理で説明するのが陰陽説。 | 六家 九流 十家 十流 |
儒家 | 孔子 孟子 荀子 | 孔子を始祖とする思考・信仰の体系。 孔子の死後、儒家は八派に分かれた。孟子は性善説を唱えて「徳治主義」を、荀子は性悪説を唱えて「礼治主義」を主張した。 | 六家 九流 十家 十流 |
墨家 | 墨子 | 「兼愛」・「非攻」・「尚憲」・「交利」という4つの要素から成り立つ。他人と一緒に利益を得るのが良いという、極めて平和主義的な考え方。 | 六家 九流 十家 十流 |
法家 | 商鞅 韓非 李斯 | 人間は法によって統制されなければならないという「法治主義」と業績には褒賞を与え罪過には刑罰を与えるべきだという「信賞必罰」で成り立つ。 | 六家 九流 十家 十流 |
名家 | 恵施 公孫龍 | 人間の言葉についての思索(言語哲学)を背景に、「白馬は馬ではない」(白馬非馬)、「亀は蛇より長い」(亀長於蛇)、「鶏は三本足」(鶏三足)、「今日越に行って昨日着く」(今日適越而昔来)などの奇怪な学説を説いた。 | 六家 九流 十家 十流 |
道家 | 老子 荘子 | 世間体や権力への欲望に振り回されることなく、自分らしくあるがままに生きるのが良いという思想(無為自然)。 老荘思想は、当時の民間宗教の源流となるとともに、後世の道教につながっていく。 | 六家 九流 十家 十流 |
縦横家 | 鬼谷子 蘇秦 張儀 | 強国・秦に対する外交政策。連合して秦に立ち向かうべきだとする「合従策」と争わずに連携すべきだと考える「連衡策」。 | 九流 十家 十流 |
雑家 | 呂不韋 | 儒家、道家、法家、墨家など諸家の説を取捨、総合、参酌した(百科全書的)学派。 代表的な書物は「呂氏春秋」 | 九流 十家 十流 |
農家 | 許行 | 賢者・王侯といえども耕作や炊事の万端を自分の手で行えば、物価は一定となり国中で偽りをする者がいなくなる。 | 九流 十家 十流 |
小説家 | 鬻子 青史子 師曠 宋子 | 故事(世間の出来事、説話など)を語り伝え、書物にして残した。民間の風俗を管理管轄する役人の間から発生したと推察される。 | 十家 |
兵家 | 孫武 孫臏 呉起 | 軍略と政略を説く。 代表的な理論は「孫子の兵法」 | 十流 |